第1回 |
ミカンをたくさん食べると生活習慣病予防効果!?(詳細) |
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点では、国内で最も流通している果実である温州ミカンの健康維持・増進効果について研究が行われています。今回は、同研究所の杉浦実先生による「ミカンの摂取量と健康に関する断面疫学調査」結果についてご紹介します。 |
調査は、果樹研究所(静岡県静岡市)の一般公開やJAで開催される農協祭等(静岡市清水区、静岡県三ケ日町、愛知県蒲郡市)の来場者を対象に自記式アンケート形式で行われました。調査項目は、性別、年齢、身長、体重、温州ミカンの摂取量、有病の状態(どのような病気にかかっているか)等です。温州ミカン摂取量については、@ほとんど食べない、Aときどき食べる(1週間に2〜3個)、Bよく食べる(毎日1〜3個)、Cもっと食べている(毎日4個以上)の4段階を選択して回答してもらいました。また、有病の状態については、主な生活習慣病を幾つか例に挙げ、実際に治療を受けている場合だけでなく健康診断などで医師から危険性が指摘されたことのある疾患名も選択して回答してもらいました。 得られた6,049名(男性2,118名、女性3,931名)のアンケート調査結果より、回答者にどのような病気が多いかが集計されました。最も回答が多かったのは高脂血症(全体の有病率18.8%)で、以下高血圧(15.7%)、糖尿病(5.5%)、心臓病(2.9%)の順でした。一方、身長と体重からBMI(Body Mass Index:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が計算され、肥満者(BMIが26.4以上)は全体の6.9%で、BMI 24〜26.4のやや肥満を併せると全体の23.9%を占めました。これらのいわゆる生活習慣病は40〜50歳代以降、極端に多くなるという結果でした(表1)。 |
表1 性別・年代別にみた各生活習慣病の有病率 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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次に、温州ミカンの摂取量別に各種疾患の有病のオッズ比(危険比の推定値)が求められました。その結果、ミカンを毎日よく食べているグループでは糖尿病有病のオッズ比があまり食べないグループに比べて統計的に有意に低いことが判明しました(表2)。また、ミカンをたくさん食べるグループの高血圧、心臓病、痛風に関わるオッズ比も有意に低いという結果でした。一方で、果物を食べることで心配されることの多い高脂血症や肥満の割合はほとんど差がみられず、温州ミカンをよく食べることで肥満や高脂血症が促進される傾向は認められませんでした。 |
表2 ミカン摂取頻度別にみた各疾患有病の多変量調整オッズ比 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
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低摂取群:週に3個以下、中摂取群:毎日1〜3個、高摂取群:毎日4個以上 |
今回の調査により、温州ミカンを多く食べる人は、糖尿病、心臓病、高血圧、痛風等の生活習慣病の有病率が低いことが明らかになりました。これまでに特に海外で果物と健康に関する多くの疫学研究が行われ、果物がガンや高血圧・心臓病などの生活習慣病に対して予防効果のあることが明らかにされていますが、今回の我が国で行われた研究結果から、温州ミカンにもこのような生活習慣病に対する予防効果のあることが示唆されました。 |
Sugiura M, Matsumoto H, Yano M. Cross-Sectional Analysis of Satsuma mandarin (Citrus unshiu Marc.) Consumption and Health Status Based on a Self-Administered Questionnaires. J Health Sci 48: 366-369 (2002) |
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