2008/5/1 |
当社研究グループは、生駒吉識氏(農研機構果樹研究所)と脇塚巧氏(全農愛媛県本部)と共同で、報文「キメラカンキツのカロテノイド解析」を果汁協会報に投稿し、2008年4月号に掲載されました。以下にその概要を紹介します。 |
柑橘産業の振興のためには、多様な消費者ニーズに対応する高品質の果実や果汁製品の提供が必要と考えられます。最近、品種開発の手法としてキメラ作出を利用する方法が実用化されました。愛媛県では「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」により産官学が連携してキメラカンキツの産地定着化技術の確立を目指しています。当社は、全農愛媛県本部の委託を受けて、キメラ果実のカロテノイド解析を行ないました。 |
カンキツ品種A(写真の場合は温州ミカン)およびカンキツ品種B(写真の場合はオレンジ)を親品種として作出したキメラ果実のカロテノイド分析を行ないました。その結果、キメラ果実の果皮カロテノイドはカンキツ品種Bに近似し、果肉カロテノイドは、カンキツ品種AとBの両方の影響を受けていると考察しました。 |
キメラ実用化技術は、例えば上記の写真のように外観はオレンジでありながら、果肉にはオレンジにほとんど含まれていない機能性カロテノイドであるβ-クリプトキサンチンを含有させることが可能であると判りました。今後、キメラ品種の産地形成によりこれまでにない新しい果実や果汁製品の販売が期待されます。 |
キメラ 表皮と内部が互いに異なる種でできた植物のことで、偶然に発見される例もみられます。キメラカンキツは接木によって作出することができるようになりました。 カロテノイド カロテノイドは果物や野菜などに豊富に存在する一群の黄色、だいだい色、紅色色素の総称です。一種類の果物や野菜に数十種のカロテノイドが含まれています。動物は体内でカロテノイドを生成することができませんので、果物や野菜などから摂取する必要があります。体内に吸収されるカロテノイドは、β-カロテン、β-クリプトキサンチンなど10種類程度であり、血液や臓器などで重要な働きをしているといわれています。 β‐クリプトキサンチン 温州ミカンのだいだい色は、温州ミカンに含まれるカロテノイド色素によるものです。温州ミカンの果肉(ミカンのつぶつぶ)には、30種類程度のカロテノイドが含まれており、その含量の50%以上はβ-クリプトキサンチンです。β-クリプトキサンチンを比較的高含有する食品には、柿、ビワ、赤ピーマン、パパイヤなどがありますが、温州ミカンほど日常生活で食べる機会が多いとはいえません。このように、温州ミカンは、β-クリプトキサンチンを摂取するための最有力食品といえます。 |
報文「キメラカンキツのカロテノイド解析」の全文がご覧になれます。 (講演要旨はPDFファイルです。Adobe Readerを取得していないと見ることができません) こちらをクリックしてください。 |
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