第3回 |
ミカンは肝臓を守る? |
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点の杉浦実先生による「ミカンと肝疾患の関係」に関する研究結果についてご紹介します。 肝臓に疾患が生じても本人が気づかないうちに進行するので、肝臓は「沈黙の臓器」と言われています。肝臓病の主な原因としては、ウイルス、アルコール、薬等がありますが、放っておくと脂肪肝から急性肝炎、慢性肝炎へと移行し、やがて肝硬変、肝臓ガンへと進行します。 |
本研究は、静岡県三ヶ日町(国内有数のミカン産地)住民の協力を得て、肝疾患のない男性266名を対象に行われました(肝疾患のない人を対象とするのは、重篤な肝疾患者が含まれると食品などの疾病予防効果を見出しにくいためです)。血液中のγ-GTP(ガンマグルタミン酸アミノ基転移酵素)値が測定され、アルコール摂取によるγ-GTPの上昇と血中β-クリプトキサンチンレベル(第2回の「ミカンと血液中のβ-クリプトキサンチンの関係」を参照下さい)との関連が調べられました。γ-GTP値は肝臓や胆のうの疾患により上昇しますが、アルコール摂取により敏感に高くなることが多いため、アルコール性肝障害の指標として用いられています。 今回の調査でも図1に示すように一日当りのアルコール摂取量の多い人ほど血中γ-GTP値は高い傾向が見られました。しかし、毎日25g(ビール大瓶1本相当)以上アルコールを摂取していても、血中β-クリプトキサンチンレベルの高いグループ(ミカンのシーズンに毎日2〜3個以上のミカンを食べる人のグループ)では、γ-GTP値はそれほど高くなく、アルコール摂取の少ない人とほとんど同じレベルでした(図2)。 この結果から、ミカンがアルコール摂取によるγ-GTP値の上昇を抑えていることは明らかで、ミカンはアルコール性肝障害に対して防御的に働いているのではないかと考えられます。 |
Sugiura M, Nakamura M, Ikoma Y, Yano M, Ogawa K, Matsumoto H, Kato M, Ohshima M, Nagao A. High serum carotenoids are inversely associated with serum gamma-glutamyltransferase in alcohol drinkers within normal liver function. J Epidemiol 15: 180-186 (2005) |
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