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みかんの機能性
第4回
ミカンは動脈硬化を防ぐ?

 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点の杉浦実先生による「ミカンと動脈硬化の関係」に関する研究結果についてご紹介します。

 動脈とは、心臓から押し出される血液の流れる血管のことで、3層構造になっており、強くてしなやかな性質を持っています(心臓へ流れる血液の血管のことを静脈といいます)。この血管内が狭くなったり、血管が固くなったりすることを動脈硬化といいます。

 動脈硬化は@血液中の脂肪が血管内にたまる、A加齢などにより血管の新しい細胞が作られなくなる、などが原因とされています。また、高脂血症、高血圧症、糖尿病、肥満、喫煙、ストレスなどが動脈硬化を促進することが判っています。動脈硬化が進行すると血管内が破れて血栓ができ、血管がふさがれて心臓病(日本人の死亡原因第2位)や脳卒中(第3位)になる場合があります。

 動脈硬化は10代から始まり、40歳を過ぎて症状が現れてくるといわれており、本人が気づかないうちに病気は進行していきます。最近、この動脈硬化の進行の程度をいろいろな方法で比較的簡単に測定することができるようになりました。その一つが「脈波伝播速度検査」です。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返し、動脈を通して血液を送り出しています。心臓が収縮すると送り出す血液量は大きくなり、拡張すると少なくなります。この繰り返しを脈波といいます。健常者の血管は弾力性があるので、脈派は血管壁に吸収されて、スピードは遅くなります。これに対して血管が硬化している場合は脈派が血管壁に吸収されないため、健常者の血管よりも伝播速度は速くなります。そこで脈波(伝播)速度を測定することで、動脈硬化の程度を知ることができます。

 本研究は、静岡県三ヶ日町(国内有数のミカン産地)住民の協力を得て、男女876名を対象に行われ、上腕動脈から足首動脈間の脈波速度と血中β-クリプトキサンチン濃度が測定されました。そして、動脈硬化の有無の境界の判定基準とされている脈波速度(1秒間に16.8m)を使って解析が行われました。血中β-クリプトキサンチンレベル(第2回の「ミカンと血液中のβ-クリプトキサンチンの関係」を参照下さい)と動脈硬化(脈波速度高値出現)の関連を図1に示しました。このように、血中β-クリプトキサンチンレベルの高い人の動脈硬化が進行するリスクは、血中β-クリプトキサンチンレベルの低い人のリスクの半分程度であることが判ったのです。このように、β-クリプトキサンチンを豊富に含むミカンの摂取は動脈硬化の予防に有効である可能性が示されました。





Nakamura M, Sugiura M, Aoki N. High β-carotene and β-cryptoxanthin are associated with low pulse wave velocity. Atherosclerosis 184: 363-369 (2006)

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