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みかんの機能性
第5回
ミカンは糖尿病を防ぐ?

 糖尿病は放っておくと網膜症や腎症、神経障害などの合併症を引き起こす恐ろしい病気です。ここでは独立行政法ヒト農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点の杉浦実先生によって行われた糖尿病発症原因のひとつであるインスリン抵抗性とミカンとの関係についての研究結果をご紹介します。

 ヒトは生きていくために、常にエネルギーを作り出して利用しています。エネルギーとして最も利用されているのは糖質(ご飯やパンに含まれるでんぷんなど)です。糖質は体の中で消化・吸収され、ブドウ糖になって血液に入り、全身へ運ばれます。この血中のブドウ糖濃度を血糖値といいます。一般には、この血糖値はブドウ糖の吸収が盛んに行われる食事後に急激に上昇しますが、血糖を下げるホルモンであるインスリンが分泌され、その働きでブドウ糖は血液中から筋肉や肝臓などの細胞に取り込まれるため、血糖値は速やかに普段のレベルに戻ります。

 糖尿病とは、何らかの原因でインスリンが不足している場合、または体質的にインスリンが効きにくくなっている場合に、血糖値を十分に下げることができず、高血糖が長く続いている状態です。インスリンが効きにくい状態をインスリン抵抗性といい、血糖値を下げるためにより多くのインスリン分泌が必要になります。インスリン抵抗性は糖尿病を始め、多くの生活習慣病の原因になります。


                                        


 本研究では、静岡県三ヶ日町(国内有数のミカン産地)住民の協力を得て、男女812名の空腹時血糖値、血中インスリン値及びβ-クリプトキサンチン濃度を測定し、そのデータから、インスリン抵抗性とβ-クリプトキサンチンの関係について明らかにしました。まず、空腹時血糖値、血中インスリン値から、インスリン抵抗性の目安となるHOMA-R指数が算出されました。つぎに、この指数3以上をインスリン抵抗性と見なし、血中β-クリプトキサンチンレベル第2回の「ミカンと血液中のβ-クリプトキサンチンの関係」を参照下さい)との関係が解析されました。その結果を図1に示します。
 血中β‐クリプトキサンチンレベルが高いグループで、インスリン抵抗性と考えられるヒトの割合は血中β‐クリプトキサンチンレベルが低いグループに比べて1/2以下でした。これまでに、血中β-クリプトキサンチンの高いヒトはβ-クリプトキサンチンを豊富に含むミカンをよく食べているヒトであることが判っていますので、「ミカンは糖尿病の予防に有効」である可能性が高いと考えられます。


HOMA-IR指数




 HOMA-R指数
 インスリン抵抗性の疫学指標であるHOMA-R指数は、空腹時の血糖値とインスリン値から下記の式によって求めることができます。HOMA-R指数には明確な臨床上の基準となる数値はありませんが、3以上でインスリン抵抗性の疑いがあると考えられています。インスリン抵抗性があると糖尿病や動脈硬化を促進するという研究結果があります。

HOMA-R指数=空腹時血糖値(mg/dL)×インスリン値(mU/L)÷405

 血中のインスリン値はインスリン抵抗性を判断する一つの目安になりますが、糖尿病を発症したヒトでは、逆に血中インスリン値が低くなる傾向があります。そこで本研究では、調査時に糖尿病と考えられるヒト(空腹時血糖値が126mg/dL以上)や糖尿病歴を有するヒトを除いた後、HOMA-R指数が3以上のヒトをインスリン抵抗性と判断して解析が行なわれました。




Sugiura M, Nakamura M, Ikoma Y, Yano M, Ogawa K, Matsumoto H, Kato M, Ohshima M, Nagao A. The homeostasis model assessment-insulin resistance index is inversely associated with serum carotenoids in non-diabetic subjects. J Epidemiol 16: 71-78 (2006)

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