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みかんの機能性
第8回
糖尿病ラットにおけるミカンの動脈硬化予防効果!!

 第4回「ミカンは動脈硬化を防ぐ?」でご紹介しましたように、ミカンをたくさん食べることは動脈硬化を予防する可能性があります。今回は糖尿病性合併症の一つである動脈硬化の予防について、動物実験を行った結果をご紹介します。なお、本研究は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点の杉浦実先生らによって行われたものです。

 実験は、ねずみを次の3つの群に分けて行なわれました。
@正常群(正常なねずみ(Wistarラット)に通常の餌を与えて飼育)
A糖尿病群(1型糖尿病を発症させるために正常なねずみにストレプトゾトシン(STZ)を注射した後に通常の餌を与えて飼育)
Bミカン投与糖尿病群(STZねずみに乾燥させたミカンジュースを10%混合した餌を与えて飼育)


 10週間飼育した後、それぞれのねずみから大動脈を取り出し、大動脈の収縮弛緩(シュウシュクシカン)(ゆるむこと)反応を試験管の中で観察しました(実験方法は後述)。その結果を図1に示します。縦軸はノルアドレナリンで収縮させた血管がアセチルコリン(アセチルコリンを加えると血管が弛緩します)でどれだけ弛緩するかを示します。血管の弛緩率が大きいほど血管の柔軟性が高いと言えます。横軸は血管を弛緩させるために加えたアセチルコリン濃度を示します。



 STZで糖尿病になったねずみ(緑)の大動脈ではアセチルコリンで弛緩する割合は最終的に約80%になり、正常なねずみ(青)と比較して弛緩しにくいことが判ります。このように糖尿病になったねずみの血管は柔軟さが失われていました。ところが、STZで糖尿病になったねずみも、ミカンジュースを混合した餌を与えて飼育した場合(だいだい色)には、正常なねずみとほぼ変わらないことから、血管の柔軟さが失われていないことが判ります。

 以上、動物実験の結果ではありますが、ミカンには糖尿病が原因の血管内皮障害(すなわち動脈硬化)に対して予防効果があることが判りました。このように動物による実験においても、ミカンが動脈硬化を予防する可能性が示されました。


 最後に、血管の収縮弛緩反応を調べる実験方法を説明します。ねずみから摘出した大動脈にノルアドレナリン(血圧を上昇させる薬)を加えると大動脈は収縮します。十分に収縮した後に今度はアセチルコリン(血圧を下げる薬)を少しずつ加えると収縮していた大動脈はアセチルコリンの濃度に従って弛緩していきます。糖尿病が進行したねずみは悪玉コレステロールの上昇とその酸化により、大動脈の血管内皮細胞が障害を受け、正常なねずみの血管に比べて血管弛緩が起きにくくなります。この実験では添加したアセチルコリン濃度別に正常なねずみと糖尿病ねずみの大動脈の弛緩率が比較されました。




 1型糖尿病
 糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖量)が高くなる病気です。1型糖尿病は、インスリン(血糖値を下げるただ一つのホルモンですい臓にあるランゲルハンス島から分泌されます)を作ることができないため、インスリンが絶対的に不足している状態です。他にもインスリンが体の中でうまく働かない2型糖尿病があります。

 ストレプトゾトシン(STZ)
 STZはすい臓のランゲルハンス島を選択的に破壊する薬物で、1型糖尿病を引き起こします。



Kamata K, Kobayashi T, Matsumoto T, Kanie N, Oda S, Kaneda A, Sugiura M. Effects of chronic administration of fruit extract (Citrus unshiu Marc.) on endhotherlial dysfunction in streptozotocin-induced diabetic rats. Biol Pharm Bull 28: 267-270 (2005)

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