みかん研究便TOPへ みかんの機能性一覧へ 研究の足跡一覧へ
みかん研究便へ みかんの機能性へ 研究の足跡一覧へ みかんの研究便へ 研究の足跡一覧へ みかんの機能性へ
みかんの機能性
第10回
糖尿病ラットにおけるミカンの肝機能障害予防効果!!

 これまでに動物を用いた研究結果として、ミカンの血糖上昇抑制効果(第7回)動脈硬化予防効果(第8回)についてご紹介しました。今回は、ミカンの肝機能障害予防効果についてご紹介します。なお、本研究は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点の杉浦実先生によって行なわれたものです。

 ねずみを次の4つの群に分けて、実験が行なわれました。
 @正常群(正常なねずみ(Wistarラット)に通常の餌を与えて飼育)
 A糖尿病群(正常なねずみにストレプトゾトシン(STZ)を注射して1型糖尿病を発症させ、通常の餌  を 与えて飼育)
 B1%ミカン投与糖尿病群(STZで1型糖尿病を誘発させたラットに乾燥したミカンジュースを1%混  合 した餌を与えて飼育)
 C3%ミカン投与糖尿病群(STZで1型糖尿病を誘発させたラットに乾燥したミカンジュースを3%混  合 した餌を与えて飼育)


 ねずみを10週間飼育した後、肝機能指標値である血液中のALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)値とγ-GTP(ガンマグルタミン酸アミノ基転移酵素)値、および肝臓中のSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)活性と還元型グルタチオン量が測定されました。


 その結果、図1に示しますように、1型糖尿病を発症させたねずみはALT値とγ-GTP値が著しく上昇しました。しかし、ミカンジュースの投与量が増えるほどこれらの数値は低下する傾向が認められました。


 また、図2に示しますように、1型糖尿病を発症させたねずみは肝臓中のSOD活性と還元型グルタチオン量が低下しました。しかし、ミカンジュースを投与することにより、それらは改善されました。


 以上の結果より、糖尿病になったねずみは酸化ストレスが高まり(SOD活性および還元型グルタチオン量の低下)、肝臓に障害を与える(血液中ALT値およびγ-GTP値の上昇)ことが判ります。しかし、ミカンジュースを投与することにより酸化ストレスが抑えられ、肝機能障害を抑制することが判りました。
 これまでに果樹研究所の栄養疫学調査の結果から、みかんをたくさん食べる人ほど肝臓が丈夫であることが判っていますが(第3回第9回)、上記のように動物実験においても、ミカンが肝機能障害を予防する可能性が示されました。
 今回の研究で、糖尿病が引き起こす肝機能障害をミカンが予防できる可能性が、動物による実験においても示されたことになります。




 1型糖尿病
 糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖量)が高くなる病気です。1型糖尿病は、インスリン(血糖値を下げる作用のある唯一のホルモンです)を作ることが出来ないために起こる病気です。なお、2型糖尿病はインスリンが不足したり、うまく働かなかったりするために起こる病気です。

 ストレプトゾトシン(STZ
 STZを実験動物に投与すると、インスリンを合成分泌しているすい臓のランゲルハンス島β細胞が破壊され、1型糖尿病を発症します。

 ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
 肝臓に最も多く存在するアミノ酸代謝酵素の一つで、肝細胞が障害を受けるとこの酵素が逸脱・遊出して血液中に漏出し、その結果、血液中のALT値が高くなります。このため、肝機能障害の指標とされています。

 γ-GTP(ガンマグルタミン酸アミノ基転移酵素)
 肝臓や胆のうが障害を受けるとこの酵素が逸脱・遊出して血液中に漏出し、その結果、血液中のγ-GTP値が高くなります。特に、アルコール摂取により高くなることが多いため、アルコール性肝障害の指標として用いられています。

 SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)
 体内で過剰に発生した活性酸素は、がんや糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病の原因になると考えられています。SODはこの活性酸素を無毒化してくれる酵素です。

 還元型グルタチオン
 グルタチオンは活性酸素を消去するだけでなく、有害物質を体内で解毒し、肝臓の機能を強化する作用が認められています。グルタチオンは還元型と酸化型があり、体内のグルタチオンのほとんどが還元型です。





Sugiura M, Ohshima M, Ogawa K, Yano M. Chronic administration of Satsuma mandarin (Citrus unshiu Marc.) improves oxidative stress in streptozotocin-induced diabetic rat liver. Biol Pham Bull 29: 588-591 (2006)

ページのトップに戻る

Copyright 2008 Ehime Bevarage Inc. Research Group. All rights. Reserved.